(先生にVoynich Manuscriptを見ていただきながら話は進んでいるところから始まります。)

先生:日本とか中国なんかで薬草とかそういうものを集めて描いた絵とは全然質的に違うよね。

私:薬草の絵ではないと?

先生:とにかく実際の植物とは違うところがあるわけ。こういうものは存在しない。

私:ひまわりの絵が描かれているということについてはどうですか?全部でたらめなのでしょうか?

先生:キク科の中でここまでこんな様な葉をしたものはないよね。(ここで葉についていっているがテープは聞き取れない。−−編集者)かなりモディファイされているんだよね。絵自体が。

私:根とかはでたらめだとは思うのですが。

先生:そうだね。

私:(絵を)描いた人は植物を研究したことがある人でしょうか?

先生:だから、どのような目的で描かれたかによるんだよね。だいたいどんなものをモデルにしたかということは分かるんだけれどね。(しかし)実際にこういう植物があるかというと全然そうではない。

私:今、日本とヨーロッパ大陸での種の違いはどの程度なんですかね?

先生:全然違う。草本植物については、ほとんど共通のものはないといっていいくらい。ヨーロッパと日本は帰化(植物)や、非常に広範囲に分布する雑草を除いて、ほとんど違う。

私:たとえば、僕は全然植物には詳しくないのですが、こちらの暗号の文からやったとしますよね。そうすると、このような卒論は認められるのですか?

先生:(笑)だからそれがどういう学問的価値があるかという問題だろうね。
えっと、(今見ている)これで全部?

私:いえ1/3ですね、植物の絵は。残りは星座とか、女の人の絵とかが出てきまして。印刷も大変なもので。

先生:まあ何かの、たぶん自然科学的のものを書き留めたものなんだろうね。おそらく。

私:植物分類などできない僕がどうにか(今後に)繋げていく方法はないのでしょうか?

先生:まあぶっちゃけた話、卒論というのは指導教官が認めればそれで終わりなんだけれどもね。どんなことやっても、認められればOKなんだよね。(中略)文献読んで、科学史やってもいいわけだよ。何らかの生物学的意義があると認められればね。(笑)

私:(絵を指し示しながら)山芋みたいのに根を突っ込んでいますよね。こんなことしても植物は育ちませんよね?

先生:今見たらこういうの結構あるんだよね。だから何か意味しているんだろうけどね。実際の植物ではこんなことはあり得ない。何か意味を持っているんだよね。ひょっとしたらこう切って、本当はもっと間があって、それを切った部分の上に乗せただけかもしれない。だから切らないで描いたらサイズがこのくらいになって(紙からはみ出すから)省略してこのようにしているかもしれない。本来は上の太さがずっと続いて。

私:根っこはどうなんですか?

先生:それは植物によっていろいろとあるけれど、こんなのはあんまりね。よく分からないね。(笑)

私:文字についてはどうなんでしょう?

先生:文字は分からないね。何らかの意味があったんだろうね。単なる落書きではないからね。同じ様な単語出てくるんだよね。

私:何かを隠すとしたら?植物描くとしたら薬草ですか?

先生:昔はね。昔は何かに使うようなのか、薬用、食用といった有用植物をまとめたものが圧倒的に多いよね。ただ単に植物をというのは、博物学がちゃんとしてきた15、16世紀ぐらいからだから。それ以前はあまり役に立たないものは描かなかったろうね。(さらに絵を見ながら)だからどんな仲間を描いたのだろうということは分かるけれど、実際どういう植物かを同定することはかなり難しいだろうね。

私:つまり実在の植物を参考にしたということですか?

先生:だろうね。このへんは全部キク科だね。(ページをめくりながら)これも、これも。そういう説明文だったら同じ単語が出てくるし。

私:(根に顔がかかれたものを指し示しながら)これもふざけていますよね。

先生:でもこういうのは結構あるんだよね。古い絵で。そこから人が生まれてきたり。ちょっと探せばあるよ。
(年代特定とひまわりの話に関して)ひまわりの仲間はひまわりだけじゃないし、(アメリカ大陸だけじゃなく)別のところにもあるし、これだけモディファイされていると元が分からないんだよね。キク科だろうということ以外は。薬草図鑑を非常にディフォルメされた…。

私:一人の人が描いたとするとかなりの労力ですよね?文字は10人くらいで書かれたといわれていますが。

先生:そうだね。一人一日一枚描いても大変だろうね。
(さらにページをめくりながら)キクの仲間が多いね。いや、でもこれだけ実際のものと違うとね。 どこの地方?

私:ヨーロッパのどこか…。イギリス…。ともいわれていますけれども。イギリスと(ヨーロッパ)大陸の方では植物の違いは?

先生:それは大陸に比べたらイギリスは島だからね。
これ〜かな。(ここで植物の名前を挙げているがテープは聞き取れない。−−編集者)
やっぱりこうしてみてみると、植物の説明が書かれているとした方が、一番可能性が高いよね。挿し絵として使っているのなら、もっと文章だけの部分とかがあってもいいよね。だいたい一個一個同じ分量くらいついているよね。このパート(植物セクション)はそういう植物の説明が書いてあったんじゃないかと思うんだよね、常識から判断すると。明らかに絵を描いてから文章が書いてあるし。


先生にはお忙しい中伺い、大変貴重なお話が聞けたと思います。特に切断されたサイズや、元になった植物、今後の指針についてなど、鍵になるであろう重要な部分であろうと思われます。ありがとうございました。

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