Joseph Martin Feely

 Elizebeth Friedman (1962)はFeelyと、彼のマニュスクリプトの解読の主張を次のように紹介している。「1943年、ロチェスターの弁護士Joseph Martin Feelyは『Roger Bacon's Cipher: The Right Key Found』という題の本を出版した。Feelyは『Shakespeare's Maze, Deciphering Shakespeare』の著者であり、他にはFriedman Collectionの「暗号馬鹿」の項目を編集をした。」彼の著書の中の記述によれば、Newbold-Kentの著書の中に描かれた絵を通してマニュスクリプトと出会い、彼の調査は実際的な方法で始まり、しかし解読は受け入れられることはなかった。彼はロジャー・ベーコンのラテン語で書かれたDe Perspectiva(光学についての著書)やCommunia Naturalium(自然科学に関するもの)の頻度を数えた。
 Feelyはベーコンのラテン語の中で"E. I. T. A. N. U. S"を「リーダ」(彼はこの語を最高頻出の文字の意味で使っている。)であると記している。彼はヴォイニッチが単純置換であるとの仮定の下に、voynichの文字頻度を平行分析した。これら研究から、彼はすぐにマニュスクリプトの絵やそれに付属する文章に関連するだろう様々な単語を「推測し当てはめる」ことを試みた。彼はベーコンのラテン語が非常に省略されていることに気づき、苛立った。この調査から、彼は文章が35%減らされていると見積もった。彼はまたも苛立ちながら、中世と古典ラテン語の違いについても論じている。これらの困難は彼の統計的調査をかなりの点で苛立たせ、彼を安易な、そして手のかからない、本文の中でありそうな単語を「推測し当てはめ」させることとなった。
 Feelyの推測の試みは実際、いくつかの成功を収めた。Newbold and Kent (1928. Plate V)に見ることができるf78r中で、Feelyは初めての解読をした。このページは裸の女性たちが液体の満ちたプールもしくは浴槽に入っているもので、Feelyはこのページの上方、かどにある2つの雲状もしくは房状構造の物体は、「卵巣」であり、そこからページ中央へ続く水路は「卵巣」を下の二つの「袋」へ運んでいる。Feelyによると、「袋」の中の「卵巣」は液体の中に立っている女性で示される。それぞれの構造のすぐ横にはヴォイニッチの文字で「ラベル(名前)」が書かれている。パイプの断面は、不思議な液体が流れ出て、プールへ流れ込んでいる。Feelyは初めの「道しるべ」を(彼はそれが推測し当てはめた結果と呼びたがったから)、これらのラベルの調査と、それらしい様々なラテン語を当てはめることで得た。図25はこれら最初の調査で彼が得た結果を示している。
 Feelyによって初めに与えられた「道しるべ」はヴォイニッチの記号を数個の文字へ置換するものであり、彼は次にこれを同じページの残りの文章を解くために使用した。彼にはマニュスクリプト全てのフォトコピーを手に入れる時間がなかったことを記しておく。彼はNewboldとkent (1928)の絵全てに対してこれを行った。彼が得た平文は、雑な、省略された偽ラテン語で、彼はこれを翻訳しf78rで婦人科的な英文を作り出した。彼はf68v3 (Newbold and Kent 1928. Plate XXII)にギリシャ語の単語を見つけ、それを解読したところMemnon像の不思議な記述を見つけたと主張した。(Feely 1943, p. 37) 他のページでは、Feelyは科学者が生きた細胞を顕微鏡下で見たことを記した個人的な日記を見つけたと主張した。その初期の研究者の非公式な書き留めは、宗教的権威の敵意の目から逃れるため暗号化され隠された。
 彼がいかにRoger Baconをこの科学日記の著者である、ということに話を進めようとしているのを隠そうとしても、彼の解読にはBacon著作を支持、確認する意図がみえる。図25は彼の研究の結果作り出したアルファベットである。(おそらくすき間を埋めるように文字を当てはめ推測し、何かラテン語のようなものができるまで試行錯誤したのだろう。)多くの研究者と同じように、彼もヴォイニッチの文字が単純な形が組み合わさり、多くの複雑な文字が作られたのだろうと考えた。Feelyに取っては不幸であるが、他の研究者は誰一人として彼の解読を正しいものだとは認めなかった。Tiltmanは一般的な意見を要約し、Feelyの努力を以下のように退ける。「彼のでたらめな方法は、偽の省略形の中に、信じられない中世ラテン語を作り上げた。」(1968, p.6)
  -M. E. D'Imperio, The Voynich Manuscript: An Elegant Enigma