筆記体系は西洋のものであろうか?
はい、それはおそらく否定できない事実であろう。実際にテキスト、絵、段落の形式、その他物理的なもの=羊皮紙など、これらは西洋のものであることは否定できない。
ヨーロッパ大陸で作られたものなのであろうか?
分からない、ヨーロッパの宣教師達が遠くの大陸を訪れたという事実は知られている。(日本でもご存じの通り。)1500年頃には新世界のインディアンは既に彼らの歴史、知識を記した本をもっていた。
f79vの中に描かれている女性はその手にはっきりと十字架を持っている。
f86r2の中に描かれている男性はその手にロウソクを持っている。
Voynich Manuscript の中に描かれている十二宮は中国のものではなく、西洋のものなのであろうか?
はい、十二に分割されているという点では。しかしそのほかの証拠は見あたらない。おそらく十二宮の絵は後になって書き加えられたものであろう。

十二宮について、おそらくその絵は後になって、Voynich Manuscript を解読しようと試みた人が、書き加えられたものなのであろう。もし星座の絵がなかったのならそれが十二宮の図か、もしくはカレンダーだと気づく人は少ないであろう。

ここに図を載せられればよいのですが、残念ながら著作権の関係で不可能です。詳しくは、どうやら太陰暦を使っているようです。(ひと月が30日)1ページに30人(もしくは15人×2ページで30日?)の裸の女性の絵が描かれていて、それぞれ棒に刺された星を持っています。おそらくこの星(=夜?)一つが一日を表しているのでしょう。彼女たちは円形に配置されていて、中心に牡牛や、天秤の絵が描かれています。12ヶ月きちんとそろってあるわけではなく、ページは一部紛失しています。


いくつかの植物は西洋起源のものだと特定されているのでは?
この解答に関しては、今のところ保留にさせて下さい。“ヒマワリ”に関しては、今のところ僕はヒマワリではないと考えています。
西洋の植物や、天体の知識を中国などに紹介するために作られたのでは?
マルコ・ポーロに代表されるように、何人もの商人、探検家、宣教師が東アジアを訪れたことは事実である。Matteo Ricci 神父は中国を訪れ、中国語を学び西洋の知識を中国語に翻訳し、中国の学者達に伝えた。(ユークリッド幾何学など)
Voynich Manuscript は宣教師によって書かれた?
可能性は大いにあろう。今後ももう少しこの点を検証したい。
Kircher はそのイエズス会のネットワークによっておそらく南アメリカの情報ももっていたに違いない。
Voynich Manuscrip は非西洋人によって、非ヨーロッパ言語によって書かれた。文字はヨーロッパ人に教えられた?
(コメント)これはないでしょう。どうしてアルファベットを教えずにわざわざ手間をかけて誰にも読めない言語を書かせる必要があるのだろうか。
暗号である?
自然言語を統計的に扱う計算(たとえばZipf's law)により、暗号よりは自然言語に近いものだといわれている。

Voynich Manuscrip はコピーのコピーのコピー…といったように複写を重ねられてきたものなのであろうか?
僕は信じていない。Voynich Manuscript はオリジナルなもので、一冊しか存在していないものだと思っている。
ページに書かれた絵と、テキストは関係あるものなのであろうか?
そうだと思っているし、そう信じたいが、残念なことに解読できるまでだれもそのことを証明できない。さらにコンピュータ解析によると幾分分が悪いような気がする。
ではヴォイニッチ手稿がピルトダウン人のような偽造物であり、歴史上の捏造である可能性は?
それに関わっている人は誰もそう思ってはいない。そして中身がそれを証明している。ヴォイニッチ手稿はとてもよく体系化されていて、規模が大きく、しかもバランスがよい。5文字以上からなる単語で繰り返し使われているものはない。もし偽造ならば、これはよくエジプトを旅行する人たちに売られるパピルスに書かれた象形文字(ヒエログラフ)を考えればいいのだが、長い句は繰り返される。ヴォイニッチの中のテキストを見ると、文の繰り返しの中の単語は違った組み合わせで現れるのだが、これは通常の文章と同じである。さらにもし偽造されたものであるのなら、そんなに長く(300ページ近い)する必要はないように思われる。
もちろん偽造を主張する人もいる。詳しくはこちら
Zipfの法則(Zipf's law)とは?
Zipfの法則とは、文書中の語を出現頻度順に並べて順序をつけると、その順位rと頻度fの積が定数Cになるという経験則である。つまり以下の式(1.1)が成り立つ。(Zifpの第一法則)

この式(1.1)は高頻度の語には当てはまるが、語の頻度が低くなってくると、同順位の語が多くなるためにうまく当てはまらなくなる。頻度の低い語に対しては以下の式(1.2)が提案されている。(Zipfの第二法則)

ここでFfは頻度fの語の異なり数を表す。式(1.1)は高頻度の語に対して成り立ち、式(1.2)は低頻度の語に対して成り立つ。

『情報検索と言語処理』−徳永健伸 (東京大学出版会)を参照。

コーパス
コーパス(または電子コーパス)=言語研究に使用されることを想定して、実際に書かれたり、話されたりした言語をコンピュータ上で利用可能にしたテキストの集合体。
電子コーパス=大量の言語資料をコンピュータで処理できる状態、機械可読形式(machine-readable form)にしたテキストの集合体。